Ⅰ:訪問看護ステーションの事業所数と新規開設の動向

 

 訪問看護の経営支援について、大前提として、今現在の訪問看護ステーションの事業所の推移と廃止・休止の推移を理解しておく必要があります。

  訪問看護コンサルテーションについて検索していくと【〇〇ヶ月で黒字化】【保険事業なので安心、需要も高い】【経費が少ない】といったうたい文句で宣伝されています。しかしながら2024年7月10日に全国訪問看護事業協会より発表された、「令和6年度訪問看護ステーション調査結果」では実に17329件の訪問看護ステーションが現在稼働しており、前年比で1632件の事業所が開設しています(前年比10.4%のプラス)。訪問看護ステーション稼働率は13年連続で伸び続けており、確かに少子高齢化社会の中で訪問看護のニーズは増えています。 

 

・廃止・休止の増加

 訪問看護ステーションが増えてきている一方で、廃止や休止に追い込まれた訪問看護ステーションも増加しています。2024年4月1日時点で1年間で廃止701件、休止291件といずれも過去最多となっています。1632件事業所が増えましたが、992件が廃止・休止となっており、全体的に増加傾向ではありますが、確実に淘汰されるような状況になっています。

 弊社事業所である青葉リハ訪問看護ステーションは横浜市青葉区にありますが、青葉区の地域特性として、訪問看護の需要に対して供給が多くなっているという状況となっています。そういったことも影響するのか、毎年2事業所ほどあたらしく訪問看護ステーションが設立され、2事業所ほど廃止や休止になっています。

 初年度の動きがとても大切になりますので、事業を始める場所はもちろんですが、事業計画をどのようにたてるかが大切になってきます。すでに運営している事業所においては、運営の状況を確認させていただき、必要であれば運営支援を中心に実施させていただきます。

 

 このように、保険事業ということもあり、他分野の中小企業と比べると安定している印象がある保険事業ですが、決して安定しているわけではありません。しっかりとした経営戦略を立て、地に足をつけた経営が必要となります。

 コンサルタントというとお金がかかる印象はあると思いますが、必要な投資と考えられるかが大切です。闇雲に経営していてもなんとかなる場合もあるかもしれませんが、必ず壁に当たります。そこで相談窓口があるというのはとても大切なことですので、是非一度経営についてお悩みや、初めての訪問看護ステーション立ち上げに際してコンサルタントという選択を検討してみてください。また、すでに事業を開始しているところにおいても様々なお悩みがあると思います。収支の状況を変化させたい・経営を安定化させるという目標であれば経営支援。現場の離職率を減らす、問題点を改善したいという事であれば運営支援をご検討ください。

 

Ⅱ:事業計画の立て方

 

 事業計画は大きく2つに分けて考えていきます。もちろん事業計画を事前に立てている場合はそれに沿って動くようにコンサルテタントの計画を立てていきますが、事業計画を1から立てる場合については以下の流れで進めてさせて頂きます。

 弊社が考える事業計画は【規模】【資金】の2つが重要であり、今現在に至るまで弊社はこの2つを中心に進んできました。この2つが明確なほど先を見通すことができ、焦らず地に足のついた経営が可能になります。現場で培ったノウハウをしっかりとお伝え致します。

 

・訪問看護の事業規模について 

 訪問看護事業の【規模】について経営コンサルタントを実施する場合、初めにお尋ねしています。今現在稼働している事業所を大きく、安定した事業所へ拡大していくのか、新しく訪問看護を始め軌道に乗せていくのか、毎年数か所の訪問看護ステーションを開設し、ゆくゆくは全国規模のステーションにしていきたいのか等々事業所規模がそれぞれ違いますので、それぞれに合わせた事業計画を作成する必要があります。弊社の場合は、理由があり一つの大規模事業所へ成長していく流れとなりましたが、その理由を共有しつつ、いろいろな計画があると思いますので、代表者様や管理者様の思い描く訪問看護が提供できる事業計画を作成する支援をさせて頂きます。これから会社を創立し、訪問看護を開業する場合や、追加融資を受ける場合、この事業計画が融資選考の際に提出できるようにします。

 

・資金について

 訪問看護事業の【資金】とは、資金繰りを指します。今現在現金がいくらあり、収入に対し、毎月出ていく経費がいくらになるのか等の資金繰りを明確します。それらをエクセルで表にまとめ、先にたてた事業規模に対して、実際にいつまでに、いくらの収益を上げていく必要があるのか算出します。こちらは実際に弊社で使用しているエクセル表を改変していく形でご提案させていただきます。

・職員関連(給与、賞与、交通費、福利厚生費、職員募集費等)

・テナント関連(賃料、契約、更新費用)

・リース関連(車、自転車、OA関連費)

・その他(社労士、税理士、コンサル報酬)

・税金関連

・備品関連

等詳細に表にまとめていきます。もちろん予測が前提ですので、随時変わっていく表になっていきます。

これが経営支援の土台となりますので、しっかりと時間をかけて作成していく形になります。

 すでに事業所を運営している会社様であれば、こちらの資金繰りを表にするところから経営支援を始めていきます。

 

 全国平均ですが、厚生労働省が令和5年度の介護事業経営実態調査として公表しているデータをブログで要約していますので、ご参照ください。

 

 Ⅲ:職員採用支援・代行

 

  訪問看護を経営、運営していくには1事業所当たり常勤換算で2.5人の看護師が常駐している必要があります(簡潔にいうと常勤2名、20時間以上職務できる非常勤1名)。訪問看護ステーションの離職率は、令和3年度看護職員就業実態調査によると17.7%と報告されています。これは病院勤務看護師の離職率13.3%よりも高い水準となっています。離職の理由は心身の不良(17.2%)、転居(11.1%)、家族の健康・介護(8.9%)、勤務負担の重さ(7.7%)となっています。これらは訪問看護ステーション開業より5年以内に集中していることも併せて報告されています。実際に職員が辞める事によって事業所の人員基準が崩れ休止、閉所に追い込まれる事業はかなり多いです。実際に青葉区でもこの10年間で閉所になってしまった事業所も数事業所ある状況です。休止にすることも一つの方法ですが、いつになったら再開できるか不明な状況で、残ってくれているスタッフへの賃金を払う必要があります。さらには休止した場合、今まで訪問していた利用者様への訪問もできなくなりますので、利用者様、ご家族様へはもちろん、他のサービス事業所やケアマネジャ―へも多大な迷惑がかかり、再開した際に再度信用を得られるかというとかなり難しくなります。

 

・職員採用支援

 

 訪問看護に興味がある看護師の方はいらっしゃいますが、職場環境や家庭環境による離職も多くいらっしゃることが現実です。どこのステーションでも苦労することが職員採用です。仲介業者等に頼むことも一つの方法ですが、年収の30%程度の手数料が発生します(130-140万円程)。弊社もご多分に漏れず、職員採用や離職にとても悩まされていました。しかしながらここ数年、職員を採用する際に弊社理念にそって職務してくれるとても優秀なスタッフを雇入れすることができています。弊社における職員採用については、様々な資料や現場の意見、他訪問看護ステーションの採用方法や状況、仲介業者への働きかけや情報交換等様々な企業努力を行い、採用については方向性を示すことができることができるようになりました。もちろん訪問看護ステーションを開設する場所によっても異なると思いますので、ご相談の上で御社の方針や理念、求める人材によって、様々な採用方法をご助言という形で支援させて頂きます。

 

・職員採用代行

 

 前述した支援と違い、代行は実際にコンサルタントスタッフが御社の採用面を担い、必要であれば事前面接まで実施していきます。御社の求める人材をしっかりと聴取し、理念や方針に見合う求職者を探し、採用を目指していく形を取ります。職員採用代行については併せてホームページの内容についてもご相談させていただきながら、より求職者の興味を引く内容になるように支援させていただきます。職員採用代行のみのコンサルタントも実施可能ですので、ご興味がございましたらお問い合わせくださいませ。

 

 

Ⅳ:リスクマネジメント

 

 訪問看護ステーションを「経営」をしていく上でのリスクマネジメントとしては収支、職員、競合の3つが大切だと弊社コンサルタントでは考えています。

 

・収支

 

 訪問看護の売り上げは基本的には介護保険、医療保険、利用者負担額、保険外訪問看護等で構成されます。令和5年度経営実態調査結果では全国平均では月306万円の収益に対し、288万円の支出(18万円/月の黒字)となっています。実際は赤字事業所と黒字事業所の差が大きい状況かと考察しているところではありますが、黒字経営できてはいますが、自転車操業のような形となっていることは否めません。訪問看護自体は確かに大きな利益を上げられる業態ではありませんが、収益を増やすための企業努力は必須となります。開業する場所や、競合する事業所数にもよりますが、訪問看護ステーションを開業する場合、首都圏では黒字化するまでに半年~1年はかかる可能性があります。そのため、前述した事業計画、資金繰りをしっかりと考えることにより廃業のリスクマネジメントでき、一喜一憂せずに地に足のついた経営ができるようになります。

 また、保険事業という印象が、お金儲け=悪のような印象が出てきますが、資金がないと倒産してしましますし、事業所も存続できず、スタッフも解雇となっていまします。訪問している利用者様はもちろん、関係事業所、スタッフ、スタッフ家族等いろいろな方々に迷惑をかけてしまいます。それだけは避けたいところではありますので、しっかりとリスクマネジメントしていくことが大切です。

 

・職員

 

 2つ目の経営におけるリスクは職員とのコミュニケーションです。①管理者orスタッフ=経営者の場合と、②管理者とは別に経営者がいる場合があると思います。

①管理者orスタッフ=経営者の場合

 訪問看護のよくある開業の形として看護師やセラピストが独立開業の1つとして訪問看護ステーションを開設する場合があります。経営者が事業所内にいる場合、必要物品や、会社規模の決断が速いこと等がメリットとして挙げられます。しかし、従業員との関係性が崩れた場合、すぐ離職につながるデメリットや、経営者が元々一般業務をメインで職務しており、主任や係長等の役職の経験が少ない場合はチームビルディングをしていく上でコミュニケーション能力は必須です。

 昭和の時代と違い、同じ職場でずっと職務することが減っているのが現在の働きい方です。そんな中で少しでも長く職務してほしいと考えると、より働きやすい職場、やりがいのある職場である必要があります。弊社も役員2名でそれぞれ役職者と役割を分けてスタッフとコミュニケーションを積極的にとるように意識しています。

②管理者とは別に経営者がいる場合

 経営者が現場にいない場合については管理者とどこまでコミュニケーションをとれるかが鍵となります。正直なところ相当な実力者(看護師としてだけではなく人として)でないと難しい経営です。もしくは配偶者の方が看護師であれば成り立つと思いますが、基本的には管理者とは別に経営者がいる場合も経営側の人間が事業所に常にいることをお勧めしたいところではあります。難しいようであれば管理者、役職者との時間をしっかりとって事業所の現状を把握しておくことが大切です。

 

 経営者や管理者になると、どうしても売り上げの数字が気になります。私たちもそうです。ただ、実際に職務してくれているからしたら売り上げよりも、1人の利用者と向き合うことに注力してもらいましょう。それがなによりも仕事のやりがいに繋がります。とにかく経営や役職側が汗を流して利用者の獲得努力です。みんなで頑張る!というのは基本ですが、闇雲に走ってもスタッフは不安になります。離職率を0にはできませんが、近づける努力をしていくことでのリスクマネジメントは必須といえます。

 

・競合訪問看護ステーション

 ケアマネジャーへ営業に行くと、必ず言われるのが「ステーションの強みは何ですか?」です。自分たちの強みがはっきりしていればいるほど、しっかりと営業につながります。しかしながら、強みと言っても24時間対応できます。ターミナル期の対応も可能です。というのは訪問看護として最低限のサービスになりつつあります。どこも対応可能であれば強みとはいえず、選ばれません。ましてや競合の訪問看護ステーションがひしめき合うような地域ですと、より具体的な強みが必要です。どのように強みを見つけるのか、私たちコンサルタントスタッフと相談しながら進めていくことで道筋を作り、競合訪問看護ステーションと差をつけていける状況を目指します。

 

 

Ⅴ:ホームページ作成支援・代行

 

 弊社経営支援の中にホームページ作成支援・代行があります。近年、ホームページがある事業所は当たり前で、主にケアマネジャ―、利用者本人・家族、求職者の方々が見てくださることが多いです。他事業所のホームページをご覧いただくとわかりますが、力を入れている事業所と、そうでない事業所に分かれることがわかります。確実に言えることはホームページに力を入れなければいけません。特に元々地域に根差して数十年の事業所や病院に併設している事業所等は顔の繋がりが各所にあったり、スタッフが離職しても病院から増員してもらう等の対応が可能ですが、そうでない事業所は利用者獲得、求職者への告知等はホームページやSNSを駆使して実施していく必要があります。ながらくブログやインフォメーションを更新していない事業所もありますが、しっかりとホームページを作りこむことで告知につながります。

 しかしながら、ホームページ作成には時間がかかります。必要な専門知識もあることから、ホームページ作成代行の業者がいます。業者に頼むことも正解ですが、実際に医療職や現場をしっている者が作成した方が、はるかに現場に即したページとなります。ホームページ作成業者にお願いする場合は50-100万円ほどで作成はできますし、きれいで作りこまれたホームページが完成しますが、内容は専門職が作らない為、薄い内容になる可能性があります。

 弊社コンサルタントの支援や作成代行では少なくとも、今現在ご覧いただいているレベルのホームページの作成はできますので、1から作り上げていく時間や労力を考えると作成の代行を検討して頂く価値はあると思います。

 ご自身で作成する場合は、こちらができる範囲にはなりますが、ご助言という形で支援させていただきます。

 弊社の場合、新規のお問い合わせをはじめ、求人にも役立っておりますので、ホームページやSNSの運用は是非お勧めしたいものです。ただ中途半端にやってしまうと逆効果になりかねますので、やるなら継続することが必要です。

 

 

 

Ⅵ:加算算定相談・支援

 

訪問看護には様々な加算があり、それぞれ算定要件があります。こちらについては開業支援、運営支援、経営支援の全てに関わるものです。加算算定の要件はそれぞれ保険が改定される際に改変されることがありますので、それぞれ情報共有させていただきます。介護ソフトの業者によっては、大手の業者の方が情報が早いところもありますので、必要に応じて支援させていただきます。

 

Ⅶ:介護ソフト決定支援

 

 訪問看護にを経営していく上で介護ソフトは必ず必要になります。弊社も3つの介護ソフトを使用してきましたが、それぞれ特徴があり、必要な機能に応じた契約をしていく形になります。

 金額もかなり変わってきますが、途中で介護ソフトを変更するには労力がかなりかかります。そのため、事前にある程度の知識をつけて頂き、その上で介護ソフトの決定をしていただく形が推奨されます。

 

Ⅷ:人事考課(人事評価)作成支援

 

 訪問看護に限らずですが、組織運営をしていく上で人事考課はとても大切なものです。人事考課がしっかりすることにより、昇給や賞与の査定につながります。逆に人事考課がしっかりと定まらないと、頑張っているスタッフとそうでないスタッフに差が出ず、頑張っているにも関わらず、そうでないスタッフと給与が変わらない状況となってしまいます。さらには、自動的に昇給するという状況になってしまいますので、在籍さえしていれば永遠に昇給し続けることになってしまいます。会社に貢献してくれたスタッフや、より利用者の為に動いてくれているスタッフには給与を多く払い、労っていくことも大切な代表や管理者の職務となります。

 しかしながら訪問看護という組織の中で人事考課をしっかりと行っている事業所はまだまだ少なく、訪問件数が多い=給与が多いのような件数性による給与を広告している事業所も見受けられます。

 もちろん件数性や年次自動昇給がNGというわけではありませんが、よりスタッフに寄り添うと考えるとしっかりと人事考課をできる状況を作っていくことが大切だと考えます。

 人事考課を考える上で労働生産性、パフォーマンス、専門性、社会性等を評価していく必要があります。それらを役員や管理者による定性評価、自己による定性評価をし、会社・事業所成績・個人成果(売上貢献度)による定量評価を合わせたものを指標とします。その中でそれぞれ役職者レベル(S)、上級職員(A)、中級職員(B)、初任者(C)、努力義務(D)と分けていきます。クレームや遅刻、勤務態度不良、サボる、時間の管理不良等の具体的なトラブルがあるスタッフは当然低評価となります。訪問看護事業でも年功序列から能力主義へ変わっていけるようにしていきましょう。